伝染性単核(球)症

伝染性単核(球)症とは、主に EB ウイルスの初感染によって咽頭炎・扁桃炎などをきたす疾患です。

病名の由来

伝染性単核球症と名付けられたのは、感染者の血液中に大量の白血球(単核球)がみられるためです。
その白血球はリンパ球です。

病名自体は 1920 年から用いられるようになりましたが、当時はその原因は不明でした。

1964 年に EB ウイルスが発見され、1968 年にこの疾患との関連が明らかになりました。

病名は、「伝染性単核症」と「伝染性単核球症」のどちらでもいいようです。

感染経路

EBVは主に唾液を通じて伝播するので kissing diseaseとも呼ばれていますが、飛沫感染もあるようです。

潜伏期間・主要症状

潜伏期間はとても長くて、4 – 6 週間と言われています。

https://www.kansensho.or.jp/ref/d43.html

診断

症状や血液像に血清診断を加えて総合的に診断します。

血清学的検査では、VCA(virus capsid antigen)-IgM、VCA-IgG、EBNA-IgG を検査します。

各パラメータの推移は以下のようになっています。

https://www.jmedj.co.jp/files/item/books%20PDF/978-4-7849-6654-7.pdf

VCA-IgG は一度感染すると生涯にわたって陽性ですが、VCA-IgM抗体は発症から2-3ヶ月のみ上昇するため、急性伝染性単核球症の診断に最も有用です。

ただし、VCA-IgM抗体は乳幼児では陽性率が低く、2歳以上で 70 – 80 %と言われています。

100 % ではないため、VCA-IgM抗体だけで診断するのではなく、VCA-IgG・EBNA-IgG 検査も勧められています。

VCA-IgG は初感染後 4 週間で陽性となります。
また、EBNA-IgG は発症後 3 – 4 週間で陽性になります。
感染から発症までの期間は 4 – 6 週間あるので VCA-IgG と EBNA-IgG の陽性化には 3 – 6 週間のタイムラグがあることになり、以下のようにして診断することができます。

  VCA-IgM VCA-IgG EBNA-IgG
既感染 (-) (+) (+)
初感染 (+) (+) (-)

診断のポイント

  • 9割の人は 35 歳までに EB ウイルスに感染するので、40 歳以上の感染者をみることは稀です。
  • 咽頭痛とリンパ節腫脹はかなり頻度が高く、診断のポイントになります。
  • リンパ球は、4,000 /μL 以上でリンパ球分画が 50 % 以上が一つの指標となります。
  • 10 % 以上の異型リンパ球を認める場合は強い診断根拠になります。

治療と予後

治療は対症療法中心で、予後は良好です。