主に学会のガイドラインを参考にしました。
腸管外合併症とその頻度
合併症 | 頻度 | |
関節痛・脊椎関節炎 | 関節痛 | 40 – 50 % |
---|---|---|
関節炎 | 10 – 20 % | |
皮膚病変 | 結節性紅斑 | 1.2 – 6.2 % |
壊疽性膿皮症 | 0.3 – 2.2% | |
IFX に伴う乾癬様皮疹 |
10 % | |
原発性硬化性胆管炎(PSC) | 2.4 – 7.5 % | |
膵炎 | 不明 | |
血管炎 | 不明 |
関節痛・脊椎関節炎
- 関節障害は最も高頻度に認められるIBDの腸管外合併症であり、関節痛は約40〜50%、関節炎は約10〜20%に発生する。腸管の活動性とは相関しない場合もある。
- 脊椎や仙腸関節などの体軸関節を主とする体軸優位型脊椎関節炎と手・肘・膝・足関節などの末梢関節を主とする末梢優位型脊椎関節炎がある。
- 体軸優位型の関節炎では、著しい可動域制限や強直性脊椎炎のような脊椎靭帯の竹状骨化(Bamboo sign)を認める場合があり、リウマチ専門医と共同で管理する必要がある。
現在、IBDに合併するする関節炎に関してエビデンスに基づいた治療法は存在しないが、
- リウマチ専門医と共同で管理する必要がある。
- 集中的な理学療法が効果的である。
- 治療としては、短期の NSAIDs は有効であるが長期投与は推奨されない。
- サラゾピリン・メトトレキサートは効果が限定的。
- 抗TNF-α抗体製剤はNSAIDsに不耐性または難治性の症例に有効である。
皮膚病変
- IBDに合併する主な皮膚病変として、結節性紅斑や壊疽性膿皮症が挙げられる。
- 結節性紅斑は予後良好で、多くは原病の改善とともに自然消退する。一方、壊疽性膿皮症はしばしば急性増悪や治療に難渋する場合があり、早期から皮膚科専門医との連携が必要である。
- 抗TNF-α抗体製剤投与中の乾癬様皮疹やJAK阻害薬における帯状疱疹などIBD治療に関連する皮膚病変の出現に注意する。
抗TNF-α抗体製剤投与に伴う皮膚病変
抗TNF-α抗体製剤投与例の約30%に皮膚病変が合併する。なかでも乾癬様皮疹と皮膚感染症が最も多い。(約 10 %)
乾癬様皮疹と皮膚感染症の発生率は経年的に上昇するが、特に乾癬様皮疹では抗TNF-α抗体製剤の中止に至る場合が多い(乾癬様皮疹;20〜30%、皮膚感染症;3%)。
抗TNF-α抗体製剤投与中に生じる乾癬様皮疹は、同薬剤が乾癬治療に用いられるにもかかわらず類似した皮膚病変を誘発することから、逆説的反応(paradoxical reaction)とも呼ばれる。
抗TNF-α抗体製剤投与中に難治性の乾癬様皮疹を合併した場合は、ベドリヅマブへ変更して改善したとする報告があり、検討してみる必要がある。
乾癬について
乾癬とは,皮膚(表皮・真皮浅層)の局面型皮疹を主症状とする慢性炎症性角化疾患で,原因ははっきりとわかっていないが遺伝的素因に環境因子が加わって発症するものと考えられている。
その治療法の一つとしてレミケードがある。