西加奈子さんの本はとてもマッタリ・ホンワカしているものが多いような気がして、これまで3冊ほど購入しています。
この本もそういうものを予想していましたが、内容はとてもシリアスなもので気分がやや落ち込んでしまうような内容でした。
でも、本屋大賞にノミネートされたようで、本の内容が多くの人から共感された結果だと思います。
どんな本?
テーマは、「子供の貧困」・「ワーキングプア」・「テレビ局の狂気」・「SNSなどにおける炎上」などでしょうか。
すべてとても重い課題です。
おそらくは、すべて現代日本が抱える深刻な問題だと思います。
小児の貧困
私が小さい頃、今から60年も前の昭和30年代は、太平洋戦争が終わってまだそれほど時間が経っておらず、社会が全体的に豊かではありませんでした。
確か6歳の頃に我が家にテレビがやってきて、とても感動したことを憶えています。
豊かとはいえない生活でしたが、それは我が家だけではなく社会全体だったわけで、田舎だったおかげで多くの家庭では、ご飯や野菜などの食材には不自由はなかったと思います。
しかし、同じ村の人の中には経済的な理由で高校進学を諦めた人もいました。
ただ、この本に出てくる小児の貧困は食べるものが不足しているという、かなりひどいレベルの貧困です。そうして、そういう境遇の人たちにはそういう境遇を自力で改善する能力はありません。
これは社会がなんとかするしかないと思うのですが。
せめて、子供だけは食事をキチンと摂って欲しいと思います。
子供は国の宝として国家が責任をもって育成するということは、予算の関係でできないんでしょうかねぇ?
ワーキングプア
日本の終身雇用が崩れて派遣社員が増えたのは、確か小泉内閣の頃からだと思いますが、そのあたりからワーキングプアが増えてきたのではないかと思います。
国民の所得は増えていないのに、企業の内部留保(つまり企業が溜め込んでいる貯金)は増え続け、現在はとんでもないレベルに積み上がっているようです。
原則的には、株式会社が得た利益は従業員と株主と内部留保に均等に分けられるべきと思いますが、今は内部留保にかなり偏っているのではないでしょうか?
しっかり働いているのに給与は増えず、国家が責任をもって子供を育成する理念を持っていない日本であれば、結婚も出産もしたくてもできないという人がどんどん増えていくでしょう。
日本という国は小さい頃学校で教えられたような弱小国ではなく、人口も東西南北の距離もEEZも大きなそれなりの大国ですが、今後は人口は急速に減少し、企業の生産性は急速に低下していって、今度こそ本当の弱小国になるんじゃないでしょうか。
テレビ局の狂気
最近、ほとんど地デジの特にバラエティを見なくなりました。
ウンザリするようなワンパターンのクイズ形式のバラエティを見たいとは思えません。
バラエティ番組は、まるで「金太郎飴」のように差し障りのない同じパターンを延々と続けています。
ちょっと変わったことすると、それこそ炎上してしまって番組のプロデューサーの首が飛ぶのかもしれません。
しかし、スポンサーにお金を出してもらうためには視聴率を稼ぐ必要があり、そのためには何でもするという部分が昔からあるような気がします。
この本の主人公の一人は、ADです。
極限までパワハラを受け、体力の限界まで働きますが、その結果精神に異常を来してしまいます。
これ、現実のテレビ局の実際の姿だと思います。
SNSなどにおける炎上
私は SNS はやったことがありません。
このブログでもコメントは受け付けていません。
コメントは役に立つのも在ると思いますが、おかしなことを書き込んでくる人もいるからです。
世の中には変な人もある一定数いて、中には法律的な限界を超えて行動する人もいるようです。
コンプライアンスという言葉がよく使われますが、実際には多くの人が法律的知識が十分でないために一線を超えてしまうのではないでしょうか?
つまり、完全に理解していれば超えないのですが、理解していなければ簡単に超えてしまいます。
私は20年ほど前に、ある人に対して民事訴訟を起こしました。
いくら何でもやりすぎだと感じたことがあって、完全に「キレた」からです。
弁護士には依頼せず、準備書面などをすべて自分で作成する、いわゆる「本人訴訟」です。
訴訟というのは、素人にはとても面倒なものですが、しかし訴訟の過程で多くのことを学びました。
訴訟を起こして以来、私の法律を遵守する精神は格段に上がったと思っています。
健康で文化的な最低限度の生活
中学生の頃に日本国憲法を習いました。
その第25条に出てくる文言です。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
読んだ瞬間に「ウソだ」と思いました。
そうでない人が一杯いたからです。
未来にはそうなるといいなと思っていましたが、それから50年以上経っても改善されていないようです。