実在している全盲の白鳥建二さんと美術館に行き、付き添っている人が絵を白鳥さんに説明するというもの。
白鳥建二さんは、自らを「全盲の美術鑑賞者」と名乗るほど美術好きで、また街の風景などを写真に撮るという趣味もあり、撮りためた写真は10万枚以上にもなるようです。
はじめは、全盲の人が美術鑑賞なんてことできるんだろうか?
という素朴な疑問が湧きました。
どのようにして絵を説明するのか

例えば、ピエール・ボナールの「犬を抱く女」では、2人の女性が同行して、
A:「ひとりの女性が犬を抱いて座っているんだけど、犬の後頭部をやたらと見ています。犬にシラミがいるかどうか見ているのかな」
B:「わたしには、この女性はなにも見てないように見えるな。視点が定まってない感じ。だってテーブルの上に食べ物があるでしょう。食べている途中に考えごとを始めちゃって、食事が手につかないんじゃないかな」
白鳥さん:「絵はどんな形をしてるの?」
こんな会話が続いていきます。
本当の意味ですべてを伝えるのは不可能だと思いますが、それでもいいようです。
絵を見ている人は、新しい気づきがあってそのことにびっくりすることがあるようです。
また、白鳥さんは会話を楽しんで、一緒に笑いたいようです。
われわれは全部見えているのか?
クロードモネの「洪水」という絵があります。

この絵を見て、絵の下の方は水じゃなくて原っぱだと言う人もいるようです。
私にはやはり水に見えますが。
われわれはものを見ているようでも、きちんと全部を認識しているわけではないということでしょうか。
他の人に絵をきちんと説明しようとすると、そのプロセスで何らかの気づきが必ずあるようです。それはとても意味のあることかもしれません。