潰瘍性大腸炎の発症には、炎症性細胞、炎症性サイトカイン、蛋白分解酵素、腸内細菌など非常に多くの因子が関与していることが示されていますが、未だ明確な原因はわかっていません。
潰瘍性大腸炎に使用される生物学的製剤
潰瘍性大腸炎に適応のある生物学的製剤は全部で 6 種類あります。

白血球とサイトカイン
潰瘍性大腸炎は主にリンパ球系の異常によって引き起こされます。

何らかの抗原刺激によって、炎症性サイトカインが分泌され、活性化されたリンパ球が大腸粘膜を攻撃し炎症が起こります。
抗TNF-α製剤と抗IL-12/23p40抗体製剤
現在、全部で6種類の生物学的製剤が潰瘍性大腸炎に対して適応となっていますが、その作用は4つになります。
上の図ではあまりにもややこしいので、抗TNF-α製剤と抗IL-12/23p40抗体製剤に関して簡略化すると、

TNF-α を中和するための抗TNF-α製剤として、レミケード・ヒュミラ・シンポニーの3種類があり、IL-12/23を中和するための薬剤がステラーラです。
抗α4β7製剤(ベドリズマブ)
上の2種類と異なり、リンパ球表面に存在するインテグリンに対する抗体製剤がベドリズマブです。
活性化されたリンパ球が血管壁を通過して間質内に遊走し炎症を起こすのですが、リンパ球が血管壁と接着する物質の一つがMAdCAM-1(mucosal vascular addression cell adhesion molecule-1)です。これは血管内皮細胞表面にあります。インテグリンはMAdCAM-1と強く接着することによって血管内皮細胞にくっつき、その後間質内に遊走します。

インテグリンに対する抗体がベドリズマブです。
ベドリズマブはインテグリンと結合してリンパ球が血管壁と接着するのを阻止します。
JAK阻害薬
上の3種類と異なり JAK(ヤヌスキナーゼ)というリン酸化酵素の作用を阻害するのがトファシチニブです。
リンパ球表面の受容体にサイトカインが結合すると、JAK の作用により STAT(signal transducers and activators of transcription)がリン酸化・活性化されて細胞核内に移動し、細胞増殖・サイトカインの産生が起こります。
トファシチニブは JAK の作用を阻害することによって炎症の悪化を阻止します。

トファシチニブが作用するのは主に JAK 1 と JAK 3 でそれらに関連したサイトカインの作用をブロックします。