NBI を利用した JNET 分類による大腸ポリープの診断

現在、大腸内視鏡を日常的におこなっており、ポリープを見つけるのはごく普通のことですが、パッと見の判断で比較的イージーに切除しています。

ボーダーラインのポリープに関しては色素散布や NBI を利用していますが、特に NBI に関しては食道ほどの有用性はないかなと感じていました。

以前の同僚でCFを専門にしている医師は大腸ポリープを発見すると、発見時点においてピオクタニンをかけ、一定時間経過した後で画像を拡大して詳細に観察していました。

しかし色素散布よりも NBI の方が遥かに手軽であり、大腸においても NBI で拡大して観察することの必要性を感ずるようになりちょっと調べてみました。

ただし、詳細な観察に関してはやはり NBI ではなくてピオクタニンによるピットパターン診断が必要なようです。

NBI の原理

NBI は特殊な光を当てて、通常の光では描出できない粘膜表層の血管と粘膜の微細構造を表示しようとするものです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/58/11/58_2314/_html/-char/ja

「通常内視鏡光(白色光)に対して,NBI は,血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された 2 つの波長(青色光:390~445nm/緑色光:530~550nm)の光で照らして観察するため,粘膜表層の毛細血管と粘膜微細模様を強調して表示することが可能.がんは自らを大きくするため血管を増やして栄養分を取り込もうとする特性があり,がんが拡大すると毛細血管が増え粘膜表面が込み入った模様に変わるため,NBI を使用することにより,がんの早期発見をサポートすることができる.」

国際 NBI 研究グループ(NICE)による分類

2009 年に国際的に使用出来るシンプルな大腸 NBI 分類作成を目的とした国際 NBI 研究グループ(NICE)が組織され、以下のような分類が作成されました。

JNET による分類

NICE 分類では Type 2 に low grade の adenoma から sm 浸潤癌までが含まれるため、Type 2 を A と B に分類する JNET (Japan NBI Expert Team)による分類が作成されました。

*1. If visible, the caliber in the lesion is similar to the surrounding normal mucosa.
*2. Microvessels are often distributed in a punctate pattern and well-ordered reticular or spiral vessels may not be observed in depressed lesions.
*3. Deep submucosal invasive cancer may be included.

ここで素朴な疑問が。

上の注釈文における「punctate pattern」とは何でしょう?

「punctate」の意味を調べてみると「点状の」という意味のようですが、JNET に関する他のサイトに提示されて意味は「均一の」とされています。
随分意味が異なる感じがしますが、おそらく「均一の」が正解なんでしょう。
JNET 自身が日本語でも注釈文を記録しておきべきかと思います。

vessel pattern と surface pattern

今後は大腸ポリープを発見したら、NBI モードにしてズームアップして、それがどの Type になるのかに頭を悩ませると思いますが、JNET 分類を見ていて根源的な疑問が生じました。

それが、「vessel pattern」と「surface pattern」です。

内視鏡所見にこれらを記録するためには、その定義をしっかりと理解する必要がありますが、それに関するものはインターネット上の情報にはありません。

NICE の定義によると、Type 2 の vessels は「Brown vessels surrounding white structures.」なので、以下の画像における褐色の線そのものではないかと思います。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6683640/

この画像では、褐色の血管と思われる部分の径は不揃いがなくて分布としても比較的均一なので vessel pattern は punctate であり、Type 2Aとなるのでしょう。

一方、surface pattern は「Oval, tubular or branched white structures surrounded by brown vessels」なので、日本語にすると「茶色の血管に囲まれた楕円形、管状、または分岐した白い構造物」となり、vessel に囲まれた部分は管状であればその幅に大きな乱れはなく、やはり Type 2A ということになるんでしょう。

vessel pattern と surface pattern が少し乱れると、Type 2B と診断できるようです。

しかし、この微妙な違いの区別はとても難しいと思います。