ヘリコバクター・ピロリ

これまでの知識が一部古くなってきたのでアップデートする目的でまとめてみます。

ピロリ菌の感染率

調査時期別のピロリ感染率は以下のようになっています。

https://kankyomirai.co.jp/pylori-kensa

時代が新しくなるにつれて感染率は低下してきてますが、まだ高いと思います。

感染経路

0 – 5 歳までの間に、口からピロリ菌が入ることで感染します。

おそらく、ピロリ菌を持っている大人から口移しで、あるいはピロリ菌に汚染されている水(井戸水・その他水道水以外の水)によって感染すると考えられています。

ピロリ菌と胃がん

胃がんのほとんど(99%)はピロリ菌感染によるものとされています。

以前は、ピロリ菌を除菌すれば胃がんの発生率が著明に低下すると言われていましたが、最近では以前考えられていたほど胃がん発生は低下しないようです。

胃がんは、1 個の癌細胞が発生してから 5 mm ほどの大きさになるのに 4 – 17 年ほどかかると言われているようです。

したがって除菌した時点で癌が発生している場合には、最長で 17 年ほどしてからやっと内視鏡で認識できるレベルになるのでしょう。

最近では「除菌後胃がん」という言葉が使われるようになってきたようですが、ピロリ除菌後に発見された癌の多くは除菌時点で既に存在していたものだと考えられるものの、新たに発生したものもあると思われます。

除菌後胃がんはピロリ菌による胃粘膜の萎縮の程度と関係しているようです。

https://www.okochi-cl.com/original92.html
除菌時の背景胃粘膜を木村竹本分類に従って、軽度萎縮、中等度萎縮、高度萎縮に分類。軽度萎縮の511人からは7.5年目に1例、中等度萎縮679人からは9人、高度萎縮484人からは14人の胃癌が発見されました。つまり、胃粘膜の萎縮が強いほど、胃癌が発見される頻度は有意に高かったのです。

つまり、胃粘膜萎縮の強い人ほど除菌後でも胃がんになる可能性が高いことを示しています。

したがって、除菌してもやはり胃内視鏡検査は必要という結論になるかと思います。

ピロリ菌の検査法

いろいろな検査法がありますが、その感度と特異度は、

https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/67.html

現場では、尿素呼気試験が最も多く実施されています。

除菌後、いつ判定するか?

2016年に改訂されたガイドラインでは、除菌後 4 週後以降に検査をするよう記載されていますが、除菌後の期間が短いほど偽陰性となる可能性が高くなります。

なぜ 4 週間とされたのかというと、除菌が失敗すると除菌後 4 週間で 95 % 以上の症例で菌体数が元に戻るため、失敗していれば検査でピロリ菌陽性となるからです。

しかし逆に言えば、5 % 近くの偽陰性があるわけで、この偽陰性率は除菌後の期間が長いほど低下します。

そこで、最近では除菌後 8 週間で検査を施行する医療機関が多いようです。

また、「delayed clearance 現象」という、除菌後の尿素呼気試験で陽性となったにも拘わらず、その後陰性化するケースが 1.3 % ほどあるようです。

再陽性化

再陽性化率はガイドラインでは 0 – 2 % とされています。

ある研究では、除菌後 1 年でピロリ検査を施行したところ、再陽性化した症例の多くが除菌前のピロリ菌と同じ遺伝子型を持っており、つまり除菌失敗例の再燃であることがわかりました。

そのような除菌失敗例の再陽性化を除くと、純粋な再感染率は 0.22 % という報告があります。

除菌後の判定を 4 週後と 8 週後のどちらにしても、可能であれば除菌後 1 年して再検した方がいいかもしれません。