クローン病に対する治療

step up 療法と top(down) 療法

作用の弱い薬剤から少しずつアップする step up 療法と最初から生物学的製剤を使用する top(down) 療法があります。

加藤順医師の書籍より

生物学的製剤は薬価も高く、患者さんの経済低負担がかなり重くなるので、投与に関しては慎重に精査する必要があります。

重症の場合には最初から top 療法でもいいと思いますが、時間的余裕があるのであれば step up 療法から始める方がいいと思われます。

クローン病に適応のある生物学的製剤

臨床消化器内科より

現在では、上記4種類に加えて「リサンキズマブ」も承認されているようです。

開始の薬剤は、どの薬剤を選択してもいいようですが、first-line ではインフリキシマブとアダリムマブ、second-line(抗TNFα製剤既使用例)ではウステキヌマブが高い有効性を示したという統計があります。

おそらく、first-line ではインフリキシマブかアダリムマブを使用している施設が多いと思われます。

インフリキシマブかアダリムマブか

それではどちらを first-line にすべきでしょうか?

インフリキシマブ=レミケード
アダリムマブ=ヒュミラ

加藤順医師の書籍より

効果はレミケードの方がやや勝っていると思いますが、アレルギーが出現することもあり、また 2 時間以上をかけて点滴する不便さもあって、上のような判断で選択するのがいいと思われます。

有効率

有効率に関してはハッキリとしたデータを見つけることはできませんでしたが、東北大の山本勝利医師の論文から以下のようなデータを頂きました。

累積の寛解維持率は年々低下していくことがわかります。

効果減弱の原因

生物学的製剤の有効期間が短くなる場合には、まずは腸管合併症や感染症の合併をチェックする必要があります。
消化管狭窄の悪化・瘻孔・肛門病変・クロストリジウム感染の有無を確認します。

これらの病変が否定できる場合には、抗TNFα抗体の血中濃度の低下が原因で、主に次の2つがその原因です。

  1. 抗TNFα抗体に対する抗体の出現
    インフリキシマブだけではなくアダリムマブに対してもその抗体が産生されるようです。
  2. 低アルブミンによる抗TNFα抗体のクリアランス上昇
    血清アルブミンが 3.5 g/dl 以下では、抗TNFα抗体のクリアランスが高いため血中濃度の低下が速くなります。

効果減弱の対策

  1. 抗TNFα抗体の増量
    アダリムマブの維持投与量は 40mg ですが、効果減弱時には 80mg までアップできます。
  2. 血清アルブミンを上昇させる
    成分栄養剤を 900kcal/日以上投与するなどして血清アルブミンを上昇させます。
  3. 免疫調節薬
    インフリキシマブにはアザチオプリンを使うべきとされていますが、アダリムマブにはハッキリとしたエビデンスはありません。
    しかし、アダリムマブでも使うべきという意見もあり、もし step up 療法ですでに使用しているのであれば継続して使用してもいいかもしれません。
  4. 他の生物学的製剤への切り替え
    ベドリズマブは海外の大規模試験において、抗TNFα抗体無効例にも有効性が示されています。
    また、ウステキヌマブは免疫原性が低くその抗体を産生しにくいと言われています。