肝膿瘍の診断と治療

肝膿瘍の存在診断

炎症のパラメータ(白血球数やCRP)の上昇と肝障害があれば、通常は腹部超音波検査は実施すると思いますが、腹部超音波検査による肝膿瘍の画像診断は時に困難なことがあります。

単純腹部 CT でも判然としないことがあり、可能であれば造影 CT を施行すると肝膿瘍と診断することはできます。

原因菌の同定

肝膿瘍の治療では原因菌の同定が非常に重要です。

肝膿瘍は細菌による化膿性肝膿瘍と赤痢アメーバによるアメーバ性肝膿瘍に分類されるようですが、それはアメーバ性肝膿瘍にはメトロニダゾールが著効を示すためです。

しかし、膿瘍内部にガスが存在したり多発性膿瘍の場合は化膿性肝膿瘍と診断できますが、ほとんどの場合、画像だけで化膿性肝膿瘍とアメーバ性肝膿瘍を鑑別することはできません。

そこで、膿瘍を直接穿刺して内容物を吸引して、細菌の種類とその細菌に対する有効な抗生剤を精査することが必要となります。

しかし、原因菌が特定できる場合はいいのですが、できないこともあり、その場合には以下の論文が参考になります。
原因菌に対する聖マリアンナ医科大学の論文です。

Klebsiella pneumoniae 24 %
Escherichia coli 9
Enterococcus spp. 7
Streptococcus anginosus group 6
Fusobacterium spp. 5
Bacteroides spp. 5
Clostridium perfringence 3
etc 41

治療

以前は、小さめの肝膿瘍でも治療の原則は穿刺・ドレナージがメインでしたが、細菌では膿瘍を穿刺して細菌の同定をおこなったら、かなり大きめの膿瘍でも抗生剤だけで治療することが多いようです。

5 cm を超えるような大きな膿瘍の場合には、ドレナージカテーテルを挿入する場合が多いと思いますが、大きさに対する一定の基準はないようです。

つまり、かなり大きな膿瘍でも、穿刺して原因菌が同定できて、それに対して効果的な抗生剤を特定できた場合には、抗生剤だけで治癒することも多いようです。

しかし、抗生剤の効果が不十分であれば穿刺してドレナージカテーテルを挿入することが必要になる場合もあります。

そして、内科的な治療によっても対処が困難な場合には外科的なドレナージを検討すべきとされています。

原因菌の特定ができない肝膿瘍に対する抗生剤治療

穿刺・原因菌の同定が可能な場合はいいのですが、抗血小板剤などを投与されていて、膿瘍の穿刺ができない場合にはどうしたらいいのでしょうか?

上記の論文では、比較的強力な抗生剤が使われることが多いようです。
頻度順に提示すると、

  商品名 通常投与量 腎障害時
カルバペネム系 メロペン 0.5 g ✕ 2 半量 〜 1/3
β ラクタマーゼ阻害薬 ゾシン 4.5 g ✕ 3 半量程度
第三世代セフェム ロセフィン 2.0 g ✕ 2 半量

腎障害時の詳細は、私の HP のこのページにあります。