原発性甲状腺機能低下症

私は20年ほど前に原発性甲状腺機能低下症になったことがあります。

気付いたきっかけは「不自然な体重増加」でした。

思い当たることもないのに体重がどんどん増え、まるでプロレスラーのような体格になりましたが、筋力は全然伴わず、またちょっと筋肉を伸展すると筋肉の痙攣を起こすようになりました。

さすがに異常だと感じ自分で調べて、おそらく甲状腺に問題があるだろうと考え採血したところ、甲状腺ホルモンが低く甲状腺刺激ホルモンが高値を示し、原発性甲状腺機能低下症と診断しました。

チラーヂンSを服用して症状は消失し、その後は甲状腺機能は正常化したので甲状腺機能低下の原因は一時的なものと思われました。

最近、外来で肝障害で来院し甲状腺機能低下症と診断された方がおり、またこの病気は頻度がとても高いので簡単にまとめてみました。

脳下垂体と甲状腺ホルモン分泌の関係

甲状腺ホルモンの分泌量は脳下垂体から分泌される TSH (甲状腺刺激ホルモン)によってコントロールされています。(この図は https://patients.eisai.jp/kojosengan-hhc/about/about01_03.html からコピーしたものです)

話がややこしくなるので、ここでは視床下部とTRHには言及しないでおきます。

甲状腺そのものの原因によって甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると、脳下垂体はそれを検知して TSH の分泌量を増やして甲状腺にもっと甲状腺ホルモンを産生・分泌するよう促します。
しかし、甲状腺自体に問題があってホルモンを分泌できないわけなので、甲状腺は上からの命令に従うことはできません。

これが原発性甲状腺機能低下症です。
「原発性」とは、他の理由ではなく甲状腺そのものに問題があるという意味です。

原発性甲状腺機能低下症の原因

慶応大学のサイトより頂きました。

慢性甲状腺炎:橋本病 自己免疫による炎症が原因で、甲状腺に対する自己抗体が陽性。
萎縮性甲状腺炎 甲状腺からのホルモン分泌にブレーキをかけてしまう特殊な抗体が原因。その結果、甲状腺が小さく萎縮します。
無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎 いずれも、一時的に甲状腺機能が低下します。通常は特別な治療をしなくても数ヶ月以内に正常の甲状腺機能に回復します。
薬物による甲状腺機能低下症 一部の不整脈の薬や抗がん剤などによるもの。
甲状腺の手術後  
ラジオアイソトープ療法後  

原因の割合は私が調べた範囲では不明でしたが、ほとんどが慢性甲状腺炎とされています。

FT3 と FT4

甲状腺ホルモンには T3 と T4 の 2 種類があります。
その構造は以下のようなものです。

T3、T4 の数字はヨウ素( I )の数を表しています。

血液中ではこれらのホルモンのほとんど(99 % 以上)は、輸送のための特殊な血清タンパクと結合しています。

結合していない free のホルモンを FT3、FT4 と呼び、実際に測定するのは、この free のホルモンです。

甲状腺ホルモンの作用

主に以下の 3 つの作用を持っています。

  1. 脂肪や糖を燃焼させて新陳代謝を活発にする。
  2. 交感神経を刺激する
  3. 成長や発達を促す。

症状

甲状腺ホルモンは上に書いたような作用を持つため、以下のような症状が出現します。

  1. 体重増加
  2. 徐脈
  3. むくみ
  4. 疲労感
  5. 便秘
  6. 無気力
  7. 寒がり

診断

採血で、TSH・FT3・FT4 を調べ、

TSH が上昇し、FT3 と FT4 が低下していれば、原発性甲状腺機能低下症と診断できます。