腸管感染症・最近の話題

令和3年におこなわれた内科学会の教育講演からです。
オリジナルはこちらです。

感染経路と症状

外因性感染の多くは、感染者の排泄物を経口的に摂取することによる。
内因性感染は、潜在感染している病原体の再活性化や菌交代現象によるもの。

症状として最も多いのは下痢と発熱である。

感染性胃腸炎感染後に過敏性腸症候群(IBS)を発症するリスクが高まることが知られており、post-infectious IBSと呼ばれている。

腸管感染症の病態

感染性下痢症には2種類の病態がある。

1つはサイトトキシンによる腸管上皮の破壊と炎症反応が回腸終末から大腸に起こるもの。
症状は血性または非血性の下痢、腹痛、発熱である。

もう1つはエンテロトキシンによる非炎症性の下痢で、エンテロトキシンによる吸収障害によるもの。
主に小腸に病変の首座があり、ノロウイルスはこのタイプ。

食中毒

潜伏期間はさまざまで、生体外毒素型細菌性食中毒では数時間以内と短く、カンピロバクターなどでは発症までに数日を要することもある。

ノロウイルスは胃酸抵抗性を持っていて 100 個でも発症する。

腸管感染症の発生状況を知る上で大切なのは食中毒統計である。

事件数としては、カンピロ・ノロウイルス・アニサキスが圧倒的に多い。
しかし、おそらく実数としてはこの数十倍発生していると思われる。

Clostridioides difficile 感染症(CDI)

典型例では、便中CDトキシンが検出され内視鏡で偽膜形成が見られるので診断は容易だが、偽膜形成はCDIに特異的ではない。実際には、細菌学的な検査に基づいて診断されることがほとんどである。

CDIの発症には、抗菌薬使用の他にPPIが注目されている。
抗菌薬やPPIが dysbiosis を来たし、2次胆汁酸が生成されなくなると芽胞の発芽が促進され、CDI発症のリスクが高まると考えられている。

CDI の診療ガイドラインによると、その診断は割と面倒で、

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_cdi_fc.pdf

また、その治療に関しても、

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_cdi_fc.pdf

腸管感染症の病変部位と内視鏡所見

内視鏡画像集

ネット上でいくつかの画像を集めてみました。

まずはカンピロバクター(キャンピロバクター)。
カンピロバクターの特徴的所見は回盲弁上の潰瘍で、40-50%に見られる。

https://www.matsuyama.jrc.or.jp/media/careers/PDF/resident/e/conference/2020/k8_fc0279441582e5601908fbcd447c4b28.pdf

次にサルモネラ腸炎。
この画像では虚血性変化が加わっているようです。

https://www.matsuyama.jrc.or.jp/media/careers/PDF/resident/e/conference/2020/k8_fc0279441582e5601908fbcd447c4b28.pdf

腸管出血性大腸菌(EHEC)腸炎は右側結腸に炎症所見が著明で、粘膜浮腫・発赤・びらん・管腔の狭小化が見られる。左側結腸では炎症所見は比較的軽い。

https://gastro.igaku-shoin.co.jp/words/%E5%BF%97%E8%B3%80%E6%AF%92%E7%B4%A0%E7%94%A3%E7%94%9F%E6%80%A7%E5%A4%A7%E8%85%B8%E8%8F%8C%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87

エルシニア腸炎では回腸末端に潰瘍が形成される。

https://www.matsuyama.jrc.or.jp/media/careers/PDF/resident/e/conference/2020/k8_fc0279441582e5601908fbcd447c4b28.pdf

少し珍しい例として腸管スピロヘータがあるようです。
上行結腸の激しい浮腫が見られ、アメーバ赤痢と重複感染していることも多いようで、そうなると診断はかなり難しくなります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/60/8/60_1486/_pdf/-char/en