潰瘍性大腸炎における colitis-associated cancer 診療の現状と今後の展望

(2025-08-15)

以下の論文をまとめます。

潰瘍性大腸炎における colitis-associated cancer 診療の現状と今後の展望

はじめに

UC のマネージメントにおいては適切な内科治療オプションを選択して病勢をコントロールするとともに,特に長期罹患の患者においては合併症の 1 つである大腸癌に対する対策も重要である.

サーベイランスを定期的に行っていても進行したステージで発見される interval cancer の症例もまれではないのが現状である. この原因としては病理診断における dysplasia 診断の難しさや内視鏡診断の難しさ,CAC 病変の悪性度の高さなどが関連していると考えられる.

CAC の疫学

最近のコホートのデータではそこまで高くないと考えられており,2013 年のメタアナリシスでは UC 発症から 10 年で 1%,10~20年で 2% であり,20 年後以降も 5% と報告されている.

至適サーベイランス方法に関する各国のガイドラインの比較

各国の最近のガイドラインにおける CAC に対する至適サーベイランス方法を Table 1 に示す.

全大腸炎型および左側大腸炎型に対し UC 発症 8 年からのサーベイランス内視鏡が推奨されている.

サーベイランス内視鏡の間隔に関しては,必ずしもコンセンサスがない状況である.多くのガイドラインがリスク分類を行うことでサーベイランス間隔を層別化する試みを行っている(Table2).

わが国の厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(以下,厚労省班会議)で行った手術症例の検討では,2 年以内にサーベイランス内視鏡を受けていたにもかかわらず, 手術時にステージ III または IV の症例が全体の 12% も占めていた. したがって,至適サーベイランス間隔の設定に関しては,今後の検討の余地がある課題と考えられる.

生検方法に関しては,以前はランダム生検が推奨されていたのに対し,最近では狙撃生検が推奨されるようになってきている. わが国の専門施設における狙撃生検とランダム生検を比較したランダム化比較試験でも,狙撃生検の有用性が示されている.

観察方法に関しては欧米では 2000 年代初頭に全大腸に色素散布を行うことで腫瘍発見率が高くなるという報告がなされ, SCENIC ステートメント以降ほとんどのガイドラインで全大腸に対する色素内視鏡が推奨されている. しかしながら,検査時間の問題などから,わが国ではスクリーニング時に全大腸に色素内視鏡を使用している施設は非常に少ないのが現状である。

腫瘍が疑わしい病変や,所見がはっきりしない場合でも CAC の多い直腸や S 状結腸などの部位に色素内視鏡を併用することが必要である.

Colitic 病変と sporadic 病変の扱い

内視鏡所見や病理学的所見から sporadic adenoma の可能性が高ければ内視鏡的な切除が行われ,炎症粘膜を母地とした腫瘍の可能性が高ければ大腸全摘が選択される.

炎症性発癌の場合には LGD の段階ですでに TP53 遺伝子に変異が生じていることが多いとされているため, p53 抗体による免疫染色を用いることで異型度の低い腫瘍が炎症を母地としているのか,sporadic adenoma なのかの鑑別に有用であるとされている.

しかしながら,完全には両者を区別できない症例もある.したがって,腫瘍が発見された場合の治療方法の決定には総合的な判断が求められる.

CAC 手術切除検体で検討してみると UC 関連腫瘍はしばしば内視鏡で視認できないような腫瘍性病変が多発している. 表層では異型度が低く内視鏡的にも浅い病変にみえても,粘膜下層以深に浸潤している症例があるということも念頭に置く必要があり, 現段階では sporadic adenoma と確定診断できない症例に内視鏡切除を行った場合には十分な病理組織所見の評価と,間隔を短くしたサーベイランス内視鏡による慎重な経過観察が重要である.

CAC 診療の今後の展望

狙撃生検の有用性が専門家のランダム化比較試験では示されたものの,CAC の症例経験が少ない内視鏡医が病変を認識することは必ずしも容易ではない.

現在は,HGD は大腸全摘の絶対適応である.同時性,異時性に多発することが多いのが理由の 1 つである.

UC に発生する腫瘍に対しても胃癌と同様の内視鏡的な治療が安全に行える条件としては,同時性,異時性病変で視認できない進行性病変がないことが条件である.

大腸の場合には胃よりも観察範囲が広いが,かなりの確度を持って癌を早期に発見できるようになれば, たとえ炎症発癌で異時性の発癌の可能性があっても ESD などの内視鏡治療が第一選択になる可能性はでてくる.

実際 ESD などの技術の出現にともない,従来大腸全摘が行われてきたような症例に対しても内視鏡治療が行われるケースも増えてきているが, 内視鏡的に視認できない同時性病変や必ずしも早期に発見できるとは限らない異時性病変もあることから長期成績の報告が待たれる.