潰瘍性大腸炎における colitis-associated cancer ―診断の現状と問題点―

(2025-08-14)

以下の論文をまとめます。

潰瘍性大腸炎における colitis-associated cancer ―診断の現状と問題点―

はじめに

潰瘍性大腸炎は若年に発症し,再燃と寛解を繰り返す炎症性腸疾患である. 慢性に炎症が持続する症例も少なからず存在し,長期罹患した患者を中心に慢性炎症を母地とした大腸癌(colitis-associated cancer;CAC)が発症することが知られている.

CAC のリスク因子として,全大腸炎型,長期経過例,若年者,家族歴を有する患者などは,大腸癌発症のリスクが高くなることが報告されている.

腫瘍の周囲に炎症が存在している場合があることや,通常の大腸癌と比べて平坦型の割合が多いことより,内視鏡による検出が容易ではないことが少なからず存在する.

サーベイランスの対象

UC の診断後,もしくは症状が出現してから 8 年経過した全大腸炎型,左側大腸炎型(直腸炎型以外)の症例を対象とするとされている.

本邦では多くないが,原発性硬化性胆管炎を合併した潰瘍性大腸炎では特にリスクが高いことより,罹病期間にかかわらずサーベイランスを毎年施行することが記載されている.

サーベイランスの間隔については,CAC の発症リスクファクターに準じて適切な施行間隔が提唱されている.

CAC・dysplasia の内視鏡的特徴 ― 早期癌を中心に ―

Laine らは CAC,dysplasia に対するサーベイランスやマネージメントの国際的なコンセンサスに関する報告を行った(SCENIC consensus).

Sugimoto ら は以前病理学的に CAC と診断された症例における内視鏡的特徴に関する検討を行い,約 80% の症例で直腸・S 状結腸に病変が存在していること, SCENIC consensus の分類で superficial elevated と flat の病変が多かったことを報告している.

Figure 1 は通常光観察で周囲粘膜と比べて色調が異なる微細なびらん病変として認識され,インジゴカルミンにて陥凹病変が確認され, 生検にて low grade dysplasia と診断された症例である.

また潰瘍性大腸炎患者に対して大腸内視鏡を行う際に,CAC 以外に慢性炎症とは関連のない,散発性(sporadic)の腫瘍病変が認められることがある.

治療方針として CAC は原則大腸全摘術を行うが,sporadic と考えられる adenoma は内視鏡治療が可能であるため, CAC と sporadic adenoma の臨床,内視鏡,および病理学的な違いについて理解することが重要である.

sporadic adenoma と考えられ内視鏡治療された症例のうち異所性に CAC が検出された症例が存在することより, sporadic adenoma と診断されて内視鏡切除を行った症例については,厳重にサーベイランスを行う必要があると考えられる.

診断的治療として内視鏡切除を行うことは許容されるが,線維化が強い場合が多く手技的に難易度が高いこと,異所性再発の割合が比較的高いことなどより, 現時点では CAC に対する内視鏡的切除のコンセンサスは得られていない.

少なくとも平坦型あるいは境界が不明瞭な病変は CAC である可能性が高いことより, このような特徴を有する病変に対しては原則として診断的治療として内視鏡治療を行うことは慎重にすべきであると考えられる.

大腸内視鏡によるサーベイランスの方法

生検方法

CAC は比較的平坦型の割合が多く,また病変の境界が不明瞭であることが多いことより,病変を検出することが容易ではない. そのため,海外を中心にサーベイランスの際にはstep biopsy,すなわち 10cm おきに 4 個ずつ,生検を行うことが提唱されてきた.

target biopsy (狙撃生検)とは、通常内視鏡+色素撒布で判定,可能なら拡大内視鏡を併用して所見のある部位から生検すること。

炎症が安定している症例では target biopsy (狙撃生検)が推奨されるが,リスクの高い症例においてはランダム生検も必要かもしれない.

色素内視鏡の有用性

色素散布により病変の局在診断,境界,肉眼形態などがより明確になり(Figure 2),CAC の診断能の向上につながっている.

色素散布による観察は検査時間を要する欠点はあるものの,病変の境界や形態をより明確にする意味では行う意義はあると考えられる.

画像強調内視鏡・拡大内視鏡

最近のメタアナリシスでは標準画像でも高画質画像においても,NBI 観察の通常光に対する優越は確認されなかった.

CAC のサーベイランスを行う際には,可能な限り高画質内視鏡を用いて,通常光観察を中心に状況に応じて NBI や色素散布を併用することにより, 効率の良いサーベイランスが可能となると考える.

i-scan や FICE など NBI 以外の画像強調内視鏡を用いた研究も行われている.

Figure 3 は平坦隆起型の病変に対して NBI 拡大観察を行った症例である.拡大することにより腫瘍部分の表面構造が明確となり,病変の境界が明確となっている.