早期大腸癌の深達度診断:色素拡大内視鏡と拡大併用画像強調内視鏡

(2025-07-02)

以下の論文をまとめます。

早期大腸癌の深達度診断:色素拡大内視鏡と拡大併用画像強調内視鏡

拡大内視鏡を用いた pit pattern 分類

Pit は拡大内視鏡を使用した上でインジゴカルミン(0.4%)を用いたコントラスト法やクリスタルバイオレットを用いた染色法(0.05%)を組み合わせることで観察可能であるる.

インジゴカルミン色素は,pit や溝内に貯留するため,pit 構造の認識や病変の肉眼型を強調することができる. 一方,クリスタルバイオレット染色は,pit そのものを染色するのではなく,pit の周囲の組織を染色するため,pit の視認性を高めることができる.

Pit pattern 分類は,サブカテゴリーを含めて以下の 8 種類に分類され,質的診断・深達度診断が可能である(Figure 1 ).

Ⅰ型 pit は円形の pit(正常 pit),Ⅱ型 pit は星芒状様の pit,ⅢS 型 pit は小型の類円形の pit(正常pit より小さい), ⅢL 型 pit は丸みを帯びた管状のpit(正常 pit より大きい),Ⅳ型 pit は樹枝状または脳回状の pit として観察される.

Ⅰ型 pit とⅡ型 pitは組織学的に非腫瘍性変化とされ,Ⅲ-Ⅳ型 pit は組織学的に腫瘍性変化を示すとされる.

I 型 pitはさらにⅤI 型軽度不整とⅤI 型高度不整の 2 つのサブカテゴリーに分類される.

I 型軽度不整はⅢL,ⅢS ,Ⅳ型 pit の不規則な配列と大小不同で表され,組織学的に腺腫 -cT1a 癌と考えられている.

I 型高度不整は pit の内腔狭小,辺縁不整,輪郭不明瞭,stromal area の染色性の低下や消失,および scratch sign によって特徴づけられる. ⅤN 型 pit は pit 構造が完全に破壊されている無構造領域として観察される . 現在,cT1b 癌の診断には,ⅤI 型高度不整とⅤN 型 pit が重要な指標とされている.

拡大併用画像強調内視鏡による JNET分類

NBI と拡大内視鏡を併用することにより,大腸腫瘍の粘膜表層の血管構造や表面構造の鮮明な観察が可能となった.

JNET 分類は血管構造所見と表面構造所見の両方を評価項目として採用し,Type 1,Type 2A,Type 2B および Type 3 の 4 型に分類される(Figure 2 ).

JNET Type 1 は,規則的な暗色 / 白色点のある,または周囲の正常粘膜と類似の表面構造と肉眼では認識できない血管が特徴である.

JNET Type 2A は均一な血管構造と表面構造と定義され,一方 JNET Type 2B は口径不同で不均一な分布の血管構造と不整または不明瞭な表面構造を持つと定義される.

JNET Type 3 は,疎血管領域,太い血管途絶,無構造領域のいずれかを呈しているものと定義されている.

JNET 分類の各 Type別の予想組織型は,Type 1 は過形成性ポリープまたは SSL,Type 2A は腺腫または低異型度癌(Tis癌), Type 2B は高異型度癌または粘膜下層軽度浸潤癌(Tis 癌または T1a 癌),Type 3 は粘膜下層深部浸潤癌(T1b 癌)である.

色素拡大内視鏡と拡大併用画像強調内視鏡の関係

JNET 分類よりも pit pattern は,深達度診断の最も信頼性の高いモダリティーであり,第一選択とすべきである.

JNET type 2B 病変は pT1b 癌の可能性があるため,拡大併用画像強調内視鏡でJNET type 2B と診断された癌疑い病変には,クリスタルバイオレット染色が推奨されている .

細谷らは,JNET type 2B 病変を pit pattern 分類で層別化することにより,不必要な外科的腸切除を減らすことを提案している .

非Ⅴ型,ⅤI型軽度不整,ⅤI型高度不整またはⅤN 型の pit patternを有する JNET 2B 病変の pT1b 癌の確率は,それぞれ4.3%,16.6%,76.0%であった. ⅤI high grade / ⅤN pit pattern のない JNET type 2B 病変は,内視鏡的切除に適していると考えられるとした.

以上より,私たちが推奨する診断から治療までの戦略を Figure 3 に示す.