NBI 拡大観察では Pit pattern 分類による深達度診断を凌駕することは難しく,低異型度がんと高異型度がんの鑑別を JNET 分類で行い,その上で, 粘膜下層(SM)浸潤の可能性のある高異型度がんに対して Pit 診断を加味するための篩い分け診断ツールとすることで合意した.
腺腫から上皮内がん(低異型度)の Type 2A と,上皮内がんから SM 軽度浸潤がんの可能性を持つ高異型度がんの Type 2B とにわけることからスタートした.
血中を流れる酸化ヘモグロビンの吸収領域のピークは 415nm,540nm ということが分かっており,この領域の波長を用いることで,照射した光はヘモグロビンを含む血管では吸収され低信号になる。 NBI で見えているのは血管であり、ピットは見えていない。
「surface pattern」 は何を意味しているのかわかりにくいが、表面の模様と考えていいと思われる。模様が regular か irregular かで判断する。
NBI 拡大観察分類を使用する実臨床上のメリットは色素撒布を必要とせず,ボタンをワンプッシュし,拡大のレバーを引くだけで瞬時に質的診断に迫り, 内視鏡治療を行う必要があるかどうか簡便に判断できることにある.すなわち,病変の組織型を一瞬にして推測できることにある.
JNET分類では Vessel pattern と Surface pattern を用い,所見を1 ~3 型に分類し,2 型はさらに 2A と 2B に亜分類されている. 2A 型は腺腫から低異型度粘膜内癌の可能性が高く将来的には色素散布を省略できる可能性が高い.
一方,2B 型は高異型度粘膜内癌~SM 軽度浸潤癌の可能性が高く,ピオクタニンによる色素拡大観察を必要とする(Figure 1).
ここで誤解のないように説明するが,高異型度癌であれば当然 SM 高度浸潤癌の可能性もあり,JNET type 2B 病変が SM 高度浸潤癌であったからといって誤診というわけではない.
クリスタルバイオレット染色による精密検査で V 型の不整の程度と領域性の評価を行い,慎重な深達度診断を行う必要があると認識する必要がある.
症例提示(Figure 1 )
JNET 分類の臨床における使用例につき症例とともに解説する.症例は直腸 S 状結腸に存在する病変で,通常観察から NBI 観察,
最終的にクリスタルバイオレット染色拡大による Pit pattern 観察まで行い治療方針を決定した.