メサラジンが寛解維持に有効と考えられた特発性腸間膜静脈硬化症の1例

(2024-12-13)

以下の論文をまとめます。

メサラジンが寛解維持に有効と考えられた特発性腸間膜静脈硬化症の1例

緒言

特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis:IMP)は,静脈の石灰化に起因する血液環流異常による虚血性大腸病変で,主として右側結腸に好発する. 臨床的には,中高年の女性に多く,下痢,便秘,血便,腹痛などで発症し,慢性の経過を示す稀な疾患とされているが, 大腸粘膜の色調変化を主とする特徴的な内視鏡所見より診断は比較的容易であり,内視鏡医として覚えておくべき疾患と言える.

症例

患者 67歳,女性
主訴 腹痛
既往歴 51歳時,急性虫垂炎に対して虫垂切除術.64歳時より高脂血症(クレストール 2.5mg/日にて治療中)
家族歴 特記すべき事項なしし
現病歴 2009年2月上旬より,右下腹部に限局した2~5分間持続する周期性の疼痛を自覚するようになったが, 腹痛は数分で消失しており経過観察されていた.1カ月後には症状の出現頻度が増加し,疼痛が著しくなったため,3月下旬,当院消化器内科に受診となった. なお,初診時まで,嘔吐,下痢,下血,発熱は認めなかった.
初診時現症 身長 156cm,体重 47.8g,体温:36.8℃,血圧:130/72mmHg,脈拍:64bpm,意識清明,眼球結膜黄染なし, 眼瞼結膜貧血なし,頸部リンパ節触知せず,心音・呼吸音に異常なし,腹部平坦,軟,腫瘤触知せず,圧痛を認めないが,右下腹部に軽度違和感の訴えあり. その他理学所見に異常を認めず.

臨床検査成績:Hb の軽度低下を認めたが,止血,生化学,腫瘍マーカーに異常を認めず.

腹部単純 CT で血管の石灰化を認めた。

初診時下部消化管内視鏡検査所見:盲腸から横行結腸は連続性に暗青色浮腫状の粘膜で覆われ,血管透見像は消失し,びらん・潰瘍が散在していた. 下行結腸から直腸の粘膜に異常を認めなかった.

大腸生検組織病理所見:上行結腸からの生検病理組織では,粘膜固有層内に拡張した小血管とその周囲に膠原線維の増生を認めた.

経過:腹部 CT 検査,大腸内視鏡検査,生検の所見より,IMP と診断した.右下腹部に周期性疼痛を認めるものの,画像所見上は軽度の変化と考えられたため,無治療にて経過観察とした. しかし,腹痛は改善せず,経口摂取も困難となったため,2009年9月下旬より入院加療となった.入院後,絶食,TPN 療法を1カ月間行い,腹痛は軽快していた. 経口摂取を開始したところ,軽微な右下腹部の違和感を訴えたため,メサラジン(ペンタサ)1,500mg/日の投与を行った.メサラジン内服を1週間継続したところ,症状は消失し, 34日後に軽快退院となった.

考察

静脈硬化の原因については,薬物摂取(漢方薬),遺伝的要因,合併疾患(自己免疫性疾患,肝疾患,高血圧,糖尿病や高脂血症)などの関与が考えられているが直接的なものは未だ明らかではない.

また、治療法に関してもコンセンサスが得られたものはない.

文献を調べてみると、内服薬については,11例に記載があり,内訳は塩酸チクロピジン3例,アスピリン3例,アミノサリチル酸製剤3例,乳酸菌製剤2例であった.

メサラジンが有効?

この症例ではメサラジンが効果的とのことだが、その理由はよくわからない。 でも、副作用もあまりないので試して見る価値はあるかもしれない。