食道運動異常症の内視鏡診断

(2024-10-10)

食道運動異常症の内視鏡診断に関して、以下の論文をまとめます。

食道運動異常症の内視鏡診断

食道の「つかえ感」や「胸痛」を有する患者に対して食道内圧検査を施行すると,約 75%の患者に何らかの食道運動障害が認められる。

しかし,本邦で広く使用されているHRM(Starlet,Star Medical 社製)検査の結果では,アカラシア患者の約 40%の IRP 値は基準を下回る値であったことが報告され, HRM もアカラシア診断に対する絶対的なものではなく,アカラシアの診断に関しては内視鏡,食道造影,HRM による総合的な評価が重要である.

LES 弛緩不全を認めない健常者の下部食道内視鏡像

内視鏡時には送気による食道内伸展により LES は弛緩した状態である.大きなヘルニアが存在しない場合には,深吸気での横隔膜の収縮により裂孔部は閉塞した状態となり, 弛緩した LES に相当する柵状血管部位は送気により食道内側から外側に凸形状となり,下部食道の縦断像を想定すると U 字形を呈することが多い.

アカラシア(LES弛緩不全)を疑う下部食道の内視鏡所見

“Esophageal Rosette”

“Esophageal Rosette” はアカラシアを疑う内視鏡所見の一つであり,その定義は,

  1. 深吸気時に観察される下部食道狭小部への全周性の襞像(“rosette” は中央から円周に向かって放射状に伸びることを意味するフランス語)
  2. 深吸気時に柵状血管の全体像は観察されず,観察できても一部のみ
  3. 柵状血管下端は確認できない

“Gingko-Leaf sign”

“Gingko-Leaf sign”8) はアカラシアを疑う内視鏡所見の一つであるが,その頻度は稀である.

  1. 吸気時にも全周の柵状血管下端が観察できない
  2. 下部食道に狭小部の存在
  3. 下部食道の縦断像を想定すると食道外側から凸形状(銀杏の葉【Gingko-Leaf】様)を呈する

“Champagne Glass sign”

“Champagne Glass sign”はアカラシアの一部患者において胃からの反転操作時の EGJ に観察される内視鏡所見である.

胃内の反転操作にてEGJ を観察すると,狭小部(LES 収縮部)が柵状血管の下端ではなく口側に位置しており,EGJ が弛緩しているように観察される内視鏡所見であり, 下部食道の縦断像では Champagne Glass 様の形状を呈することが想定され,この所見を “Champagne Glass sign” と呼んでいる.

食道裂孔ヘルニア症例でも類似した内視鏡像が得られるが,“Champagne Glass sign”との違いは狭小部の締め付けの程度と狭小部肛門側の粘膜が胃粘膜であることである.

アカラシアであっても,反転像にて EGJ が開大しているアカラシア症例が存在することを念頭に置くことが重要であるとともに, 下部食道の見下ろし像の所見を加味し判定することが重要である.“Champagne Glass sign” を有するアカラシア患者の LES弛緩障害範囲は LES 全体ではなく, LES の下方部位を除く LES の中部から上方部位の障害が存在すると想定される.

食道体部運動異常を疑う内視鏡所見

“Pinstripe Pattern”

食道粘膜表層のごく細い縦走する全周性の襞 “Pinstripe Pattern”は客観的な所見に乏しい初期アカラシア患者の約 60%に観察され, POEM での筋層切開後には消失傾向にあることから,内輪筋の収縮に関連したものと考えられている.

多発輪状(数珠状)収縮波,多発片側性収縮波,らせん状収縮波

多発輪状(数珠状)収縮波が観察され、LES弛緩不全に加え下部食道に同期性収縮波が観察され,Type-3 のアカラシアと診断された症例。

「つかえ感」を主訴で来院した 67歳の男性である.食道内視鏡像では,食道体部に多発する片側性の収縮波(Figure 12-a), 下部食道にらせん状の収縮波(Figure 12-b)が観察される.Figure 12-c は食道造影所見であるが,内視鏡所見を連想させる波状の食道壁が観察される.

HRM で LES 弛緩は見られず,下部食道の同期性収縮が観察されることから,Type-3 のアカラシアと診断された。

「つかえ感」で来院した 72 歳の男性の食道内視鏡所見を示す.下部食道にらせん状の収縮波(Figure 13-a)が観察されるが, EGJの内視鏡像は柵状血管下端も含め観察(Figure 13-b)されることから,LES 弛緩は異常なしと考えアカラシア以外の食道運動異常症を疑った.

この図ではアカラシアとなっているが、本文中にはアカラシア以外の食道運動異常症を疑ったと書いてある。
この症例はアカラシアではなくて、DES ではないだろうか?

Jackhammer Esophagus

下部食道の伸展不良・狭小化を認めた症例を提示する.38 歳の男性で「胸痛,嚥下困難」を主訴来院した.仕事ができない程の強い症状が 24 時間持続することもあり, 著しい QOL 低下を認めていた.

強収縮が症状の原因と考え,胸腔鏡での筋層切開術(16cm)を行い症状は消失した.Jackhammer Esophagus 症例では, 内科的治療において経過観察可能である患者がいる一方,筋層切開による治療を必要とする患者もいる.