インターネット上にある以下の論文を中心にまとめます。
化膿性連鎖球菌 Streptococcus pyogenes は,β溶血性でランスフィールド分類でA群に属することからA群β溶血連鎖球菌(以下,溶連菌)と呼ばれる.
通性嫌気性グラム陽性球菌であり,ヒトの咽頭に通過菌として存在する.保菌率は健常小児の5~20%とされる. 小児急性咽頭炎の主要な原因微生物であり,その他,伝染性膿痂疹,蜂窩織炎,丹毒,激症型A群連鎖球菌感染症などの原因菌となる.
免疫反応による非化膿性合併症として溶連菌感染後急性糸球体腎炎(poststreptococcal glomerulonephritis: PSAGN)と, 急性リウマチ熱(acute rheumatic fever: ARF)がある.
溶連菌性咽頭炎は小児の咽頭炎の15~30%を占め,細菌性咽頭炎の中で最も多い.好発年齢は5~15歳である.季節性としては,例年冬~初夏に流行する.
溶連菌性咽頭炎の主症状は,発熱,強い咽頭痛,有痛性前頸部リンパ節腫脹である.頭痛,腹痛,嘔気をともない,全身状態が不良となって, いわゆるインフルエンザ様疾患の状態で受診することも少なくない.鼻汁や咳嗽,眼脂などのカタル症状はみられず,ウイルス性鼻咽頭炎との鑑別に役立つ.
咽頭所見は特徴的で,典型例では口蓋垂~軟口蓋に強い発赤と点状出血,口蓋扁桃の発赤・腫大と白苔付着が見られる. 舌ははじめ白苔で覆われ(white strawberry tongue),その後,紅色の舌乳頭が目立つ赤い舌(red strawberry tongue)となる.
猩紅熱は溶連菌の外毒素である発赤毒素による発疹性疾患である.発疹は咽頭炎発症の翌日に発生することが多く, 頸部から体幹・四肢に拡がるびまん性の微細な丘疹状紅斑(sandpaper-like)となる.
Mclsaacスコアによるスコアリング。
咽頭・扁桃ぬぐい液によるPOCT(point-of-care)検査として,有用性が高い.検査の感度は80~90%,特異度は95%以上である. 特異度が高いため,症状・症候,年齢,Mclsaacスコアなどで検査前確率を高めた状態で陽性となれば溶連菌性咽頭炎と確定診断できる.ただし,保菌状態でも陽性となりうる.
咽頭・扁桃ぬぐい液による培養検査の感度は90%以上であり,溶連菌性咽頭炎の診断において標準的な微生物検査である. ただし,結果まで48時間以上かかること,抗菌薬の前投与があると陰性になりやすいこと,などのデメリットがある.
抗ストレプトリジンO抗体(anti-streptolysin O: ASO)や抗ストレプトキナーゼ抗体(anti-streptokinase: ASK)は, 感染後1~2週後から上昇し,1~2ヵ月後にピークに達したのち数ヵ月間は高値を維持する.このため,溶連菌性咽頭炎の急性期診断には有用でない.
溶連菌性咽頭炎は3~5日間で治癒するself-limitedな疾患であるが,症状の軽快・他者への水平伝播の防止・ARFの発症予防・化膿性合併症の予防を目的に, 全例,経口抗菌療法を行う.
ARFの発症予防については,咽頭炎発症後9日以内の抗菌療法開始がエビデンスがある.
標準的な第一選択薬はペニシリン系薬であり,アドヒアランスの観点からアモキシシリン(AMPC)が用いられることが多い.
投与期間は10日間。
ARFは溶連菌性咽頭炎の2~3週後に発症するが,迅速抗原検査による溶連菌性咽頭炎の早期診断と適切な抗菌療法の進歩によって,極めてまれな疾患となった. 関節炎(大関節の移動性多関節炎,75%),心炎(40~50%),舞踏病(15%),皮下結節と輪状紅斑(10%以下)が,改変Jones診断基準のmajor criteriaを構成している.
このうち,症状は多関節炎で始まることが多く,足・膝・肘・手関節が侵される. 心炎は内側,すなわち弁および心内膜から始まり,心筋,最後に心膜へ拡がる.僧帽弁逆流症,心膜炎,ときに大動脈弁逆流症が見られやすい.
PSAGNは溶連菌性咽頭炎の平均10日後,皮膚感染症の2~3週後に発症する.ARFと異なり抗菌療法による予防効果はなく,現在でも頻度が高い(発症率は咽頭炎の約5~10%, 膿痂疹の約25%).