SP-AとSP-D

(2024-04-17)

間質性肺炎とは

間質性肺炎とは肺の間質を主たる病変の場とする炎症 性疾患の総称であり,病因の明らかな膠原病肺,放射線 肺炎,薬剤性肺炎,過敏性肺炎などの続発性間質性肺炎 と病因の明らかでない特発性間質性肺炎に分けられます.

間質性肺炎の多くは肺間質への肺胞マクロファージ,好 中球,リンパ球を主体とした炎症細胞浸潤にはじまり, 炎症の修復過程で肺胞領域に線維化が引き起こされ,そ の多くは治療に抗する不可逆的変化となります.病理組織学 的にも,臨床的にも多彩な形態,病態を示す疾患群です.

間質性肺炎の約半数を占める特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonia : IIP)は肺胞領域に形成 された線維化が徐々に進展し,肺胞腔は虚脱すると共に 硬化し,肺葉容積の減少による両側下肺葉が縮小します.

呼吸機能の著しい低下を来し,ついには呼吸不全状態となる予後不良な疾患です.経過中急激に増悪し,致死 的になることも稀ではありません.現在のところ,根治的治療法はありません.

肺サーファクタント

SP-A(Surfactant Protein A) は肺サーファクタントの 1 つです。

肺サーファクタントは A から D までの 4 種類が知られており、 SP-B と SP-C は,DPPC などのリン脂質との相互作用を介して気相 ― 液相界面における 表面活性作用を発揮することによって肺胞の虚脱を防いでいます。

一方、SP-A と SP-D は分泌型コレクチンで、生体防御に重要な役割を果たしています。
コレクチンとは,コラーゲン様ドメインと C 型レクチンドメインを有するハイブリッドタンパク質です。

これらのサーファクタントは Ⅱ 型肺胞上皮細胞およびクララ細胞から分泌されます。

クララ細胞とは、終末細気管支と呼吸細気管支の移行部に存在する無線毛細胞です。

間質性肺炎における SP-A と SP-D の有用性

SP-A,SP-Dの臓器・組織・細胞特異性は非常に高く、特発性間質性肺炎, 膠原病肺,放射線肺炎,過敏性肺炎,ARDS,肺胞蛋白症で高値を示すことはこれまでの研究から明らかであり,間質性肺炎を中心に疾患特異性が高いと言えます。

間質性肺炎の血清 SP-A,SP-D の陽性率

SP-A の陽性率は、

SP-A 陽性率
IIP 71 %
膠原病肺 44 %
過敏性肺炎 64 %
放射線肺炎 67 %

SP-D の陽性率は、

SP-D 陽性率
IIP 87 %
膠原病肺 71 %
過敏性肺炎 93 %
放射線肺炎 44 %

IIP の臨床病態との関連

IIP 患者の重症度の指標ともされている動脈血酸素分圧(PaO2 )との関連をみ ると,IIP の安定期における PaO2 と血清 SP-A,SP-D濃度とは有意な関連は認めず、血清 SP-A,SP-D 濃度は PaO2 からみた IIP 患者の重症度と直接関連の ない病態で変動していることが示唆されました。

つまり、血清 SP-A,SP-D濃度が高いからと言って重症度が高いわけではないようです。

間質性肺炎の微小病変と血清 SP-A,SP-D

HRCT 薄切画像による IIP の特徴的画像所見としては

  1. 蜂巣肺(honeycomb lung)
  2. 淡い肺野濃度上昇のスリガラス陰影(ground glass opacity : GGO)
  3. 肺葉の縮みと traction bronchiectasis を伴う濃い肺野濃度上昇

の 3 つがあります。

CT でしか検出できない微小な病変と SP-A SP-D の関連を見ると、
上の 2 のタイプでは SP-D の陽性率が高く、3 のタイプでは SP-A の陽性率が高いようです。

IIP の臨床経過との関連

IIP の臨床経過で SP-D が有意に上昇する例では肺活量が有意に減少することが示され、SP-D の上昇は IIP の進行度を示すマーカーとなることが示唆されました。

IIP の予後因子としての SP-A,SP-D 濃度

IIP 患者の予後は初診時の重症度や肺癌合併などの臨床病態によりますが, 5 年生存率は 40~50% とされており, 予後不良です.

IIP の重症度を判定する基準は PaO2の程度でなされています.初診時の PaO2 が 70 Torr 以上 (重症度 II 度以下)と軽度な低下を示す IIP 患者でも, 進行度が速く,比較的短期間に呼吸不全状態になることも多いと思われます.

IIP の重症度,予後を初診時の PaO2 のみで判断しえないことは明らかです.

初診時に SP-A SP-D が高値を示した例では PaO2 が 70 torr 以上の比較的軽症でも死亡率が高いようです。

参考文献

  1. 間質性肺炎のバイオマーカーとしての肺サーファクタント蛋白質
  2. 肺サーファクタント蛋白質
  3. 肺コレクチンによる自然免疫制御機構