今回の文献は 「間質性肺炎の新しい診断・治療概念」 です。
診断の第一歩は,間質性肺炎の存在に担当医 が気付くことである.
咳・息切れのあ る患者には,胸部単純X線検査だけでなく,聴 診を怠らないこと,X線写真で異常がなくても, 捻髪音が聴取された際には胸部CT検査と血清マーカーの測定を実施 することが推奨される.
聴診所見(捻髪音)や画像所見から,間質性 肺炎の可能性が疑われる際には,膠原病を念頭 に置き,手指関節・皮膚所見等をチェックする. 反対に,膠原病患者の診察時には,捻髪音の確 認,胸部画像検査ならびに血清マーカーの定期 的な実施が推奨される.疾患にもよるが,膠原 病患者の肺病変保有率は20~80%と高率である.
間質性肺炎は,「遺伝的素因」と「環境因子」 が複合して生じる疾患である.従って,家族歴, 職業歴ならびに生活環境歴を念頭に置いた詳細 な問診を心掛ける.
ルーチン検査では,従来から推奨されている とおり,聴診で捻髪音を聴き落とさないこと, 高分解能CT(high-resolution CT:HRCT)で軽微 な間質性変化をも見落とさないことに留意す る.血液検査では,血清マーカー,KL-6(Krebs von den Lungen-6),SP-D(surfactant protein-D), SP-A,LDH(lactate dehydrogenase)は必須検査 項目である(注意:保険診療上,前 3 項目の同 時測定は認められていない).また,膠原病の存 在を疑う場合には,間質性肺炎を合併し得る病 型に有用な各種自己抗体を測定する.
間質性肺炎の鑑別診断は,図1に示した診断フローに沿っ て行うことが推奨されている.
この診断フロー は,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)を中心に作成されたものであり,鑑別 診断の流れを理解するうえでは有用であるが, 数値化された項目が少ないため,呼吸器専門外 の医師が実際に使用しようとすると,Yes/Noの 判断に迷うことも少なくない.
間質性肺炎の CT所見(特にHRCTでの判定が 推奨される)には,さまざまなパターンがある が,IPFに最も特徴的な所見は蜂巣肺である.
現在,国内で保険適用のある血清マーカー は,KL-6,SP-AならびにSP-Dの 3 項目である. KL-6 は愛媛大学及び広島大学で,また,SP-A及 びSP-Dは札幌医科大学の研究チームが中心とな り,産学共同で開発されたものである.
この 3 種のマーカーは,どのタイプの間質性 肺炎においても臨床的有用性が示されており, 「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」(日本呼 吸器学会,2012 年) にも採用されている(図2). 特に,悪性腫瘍治療薬や免疫調整薬等の 肺障害を来たしやすい薬剤を使用する際には, 使用前,投与中,発症を疑ったときに適宜測定 し,値の変動を追跡することで,間質性肺炎発 症の早期発見に役立つ.
原因不明の間質性肺炎の総称である特発性間 質 性 肺 炎(idiopathic interstitial pneumonias: IIPs) は,2013 年 に ATS(American Thoracic Society)/ERS(European Respiratory Society)に よる国際分類の改訂が行われ,現在,9 つの亜 型に分類されている.
このなかで,IPFは患者数 が最も多く,また,ステロイドが効かず,予後 不良の難治性疾患と位置付けられている.5 年 生存率は約 30%であり, 悪性腫瘍と比較する と,肺がんよりは良好であるが,乳がんや大腸 がんよりはるかに予後不良である.
間質性肺炎と肺線維症という 2 つの病名は, 診断を進めるうえで同じ括りの疾患として使わ れるが,それぞれの疾患名が表しているとお り,前者は「肺間質に炎症性変化を示す疾患の 総称」であり,後者は「線維成分が沈着したた めに肺組織が硬化した状態を示す疾患の総称」 である.
分子生物学的には,前者はTNF-α(tumor necrosis factor-α)に代表される炎症であり,後 者はTGF-β(transforminggrowthfactor-β)に代表される線維化の促進が病態の本質である. 従って,間質性肺炎及び肺線維症の治療におい ては,主体となる病態が炎症なのか線維化なの かをしっかりと見極めたうえで,治療薬を適切 に使い分ける必要がある.すなわち,ターゲッ トとする病態を意識した治療が求められる
従来,治療薬の選択肢と言えば,炎症性病変 をターゲットとするステロイドや免疫抑制薬に 限られていたが,線維化病変をターゲットとす る 2 つの抗線維化薬,ピルフェニドン(2008 年 発売)とニンテダニブ(2015 年発売)が注目さ れている.
注目の2疾患,interstitial pneumonia with auto- immune features(IPAF) と pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)について紹介する.いず れも正式な和名が決まっていない.
以下、省略。
特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)について。