今回の文献は 「副腎皮質機能低下を早期診断・治療するために」 です。
副腎は,ステロイドホルモンの合成・分泌を 担う皮質(中胚葉由来)と,カテコールアミン の合成・分泌を担う髄質(外胚葉由来)から構 成されている.副腎皮質はさらに 3 層に分かれ ており,球状層からミネラルコルチコイドであ るアルドステロン,束状層からはグルココルチ コイドであるコルチゾール,網状層からは副腎 アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステ ロン(DHEA)がそれぞれ合成・分泌される.
脳下垂体・視床下部からのコントロールに置かれていて、正常状態と各病態のイメージ図は以下の通り。
原発性副腎皮質機能低下症の原因は,表 1 に 示すように多岐にわたるが,先天性のものと後 天性のものに分けられ,狭義には後天性のもの がAddison病と称される.
成因としては特 発性(自己免疫性副腎皮質炎)が 49% と最も多 く,次いで感染性が 27% であった.
続発性副腎皮質機能低下症の中で最も多いの は,ステロイド(グルココルチコイド)の長期 投与によって起こる医原性の副腎皮質機能低下 症である.
長期にわたるグルココルチコイド投 与は,負のフィードバック機構により,視床下 部―下垂体―副腎系を抑制し,その結果,副腎は 萎縮してコルチゾール分泌は低下する(図 1)
1 日当たりヒドロコルチゾン 30 mg(または 7.5 mg!日のプレドニゾロン,0.75 mg/日のデキサメ タゾン)を 3 週間以上の服用することで,副腎 萎縮とコルチゾールの分泌低下を来たす可能性 がある.
急性副腎皮質機能低下症(副腎クリーゼ)は, 急激な副腎皮質ステロイドの絶対的・相対的欠 乏による循環不全(低血圧,循環血液量減少性 ショック)を中心とした病態で,迅速かつ適切 な治療が行われないと致死的となる疾患である.
病因としては,
慢性副腎皮質機能低下症で認められる臨床症 状は,易疲労感,全身倦怠感,脱力感,体重減 少,消化器症状(食欲低下,嘔気・嘔吐,下痢, 便秘,腹痛など),精神症状(無気力,無関心, 嗜眠,記銘力障害,抑うつ,不安など),耐寒性 低下,関節痛,筋肉痛,筋力低下,めまいなど であるが,ほとんどの症状は非特異的である(表2).
急性副腎皮質機能低下症でも,悪心・嘔吐, 腹痛,下痢,全身倦怠感,発熱,血圧低下,意 識障害など,非特異的で多彩な症状を認める. 消化器症状が前面に出る場合は診断が遅れるこ とがある.
副腎皮質機能低下症では,低ナトリウム血症 を高率に認め,さらに高カリウム血症,低血糖, 貧血(正球性正色素性),リンパ球増多,好酸球 増多,好中球減少,高尿素窒素血症,低コレス テロール血症,高カルシウム血症などの所見を 認める(表 3).
低ナトリウム血症は,コルチゾー ル,アルドステロン欠乏による腎臓でのナトリ ウム再吸収低下に加えて,コルチゾールによる 抗利尿ホルモン(ADH)分泌抑制が解除される ため,SIADH(ADH不適切分泌症候群)様の病 態を呈することも関与すると考えられている.
副腎皮質機能低下症の診断には,血中コルチ ゾールの低下を確認することが重要であるが, 血中コルチゾール濃度は日内変動があり,スト レスなどで高値になるため,診断には注意を要する.
早朝空腹時のコルチゾールを測定し,4 μg/dl未満であれば,副腎皮質機能低下症を強く疑う (図 2).一方,早朝のコルチゾール値が 17 μg/dl以上であれば,副腎皮質機能低下は否定的と考 える.
早朝の血中コルチゾール濃度が 17 μg/dlを下回 り,副腎皮質機能低下症が疑われる場合には, 図 2 の診断フローチャートに沿って,まず迅速 ACTH負荷試験を行う.
1-24 ACTH(コートロシンⓇ)250 μgを静注(あるいは筋注)して, 30 分と 60 分後に血中コルチゾールを測定し,頂 値が 18(あるいは 20)μg!dl以上あれば副腎皮質 機能正常と判断する.
迅速ACTH負荷試験で,コルチゾールが 18(あるいは 20)μg/dl未満の場 合は,副腎皮質機能低下症と診断し,ACTHが 高値の場合は原発性,正常から低値の場合は続 発性を考える.
続発性副腎皮質機能低下症の場 合は,視床下部性と下垂体性の鑑別を目的とし て,CRH負荷試験を施行する.CRH負荷試験で 血中コルチゾールの頂値が 18 μg!dl未満の場合は 下垂体性,18 μg!dl以上の場合は視床下部性を疑う.
コルチゾールの 1 日の基礎分泌量は,8~15 mg! 日と報告されており,通常ヒドロコルチゾン(コー トリル Ⓡ)10~20 mg!日を,コルチゾールの日内 変動に合わせて,朝 2,夕 1 の割合で分割投与す る.
副腎クリーゼが疑われる症例では,コルチゾー ルの検査結果を待たずに,直ちに血管を確保し て, まずヒドロコルチゾン(100 mg)を静注し, 脱水・電解質補正(生理食塩水)およびブドウ 糖補給のための輸液を行う.その後もヒドロコ ルチゾン 100 mgを 6 時間ごとに静注する.